非占有共有者による不当利得金・損害賠償金の請求の可否
共有物を一部共有者が単独で占有している場合、あるいは共有者の一部の者から共有物を占領使用することを承認された第三者に対して、その余の共有者は、当然には、共有物の明渡しを請求することができないとされています(最高裁昭和41年5月19日判決・民集20巻5号947頁、最高裁判昭57年6月17日判決・判例タイムズ479号90頁、最高裁昭和63年5月20日判決・判例タイムズ668号128頁)。
このような場合において、最高裁平成12年4月7日判決・判例タイムズ1034号98頁は、不動産の共有者は当該不動産を単独で占有することができる権原がないのにこれを単独で占有している他の共有者に対し、自己の持分割合に応じて占有部分に係る賃料相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求することができるとしています。
したがって、明渡しを求めることのできる特段の事情のないケースでは、①共有物分割か、②不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求することになります。
ただし、最高裁平成12年4月7日判決は、占有者が共有物を単独で占有することができる権限につき主張、立証のない場合に地代相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求することができると判断しているのであって、占有者が共有物を単独で占有することができる場合にはこれらの請求もできないことになります。
最高裁平成12年4月7日判決・判例タイムズ1034号98頁
Y1及びY2が共有物である本件各土地の各一部を単独で占有することができる権原につき特段の主張、立証のない本件においては、Xは、右占有によりXの持分に応じた使用が妨げられているとして、右両名に対して、持分割合に応じて占有部分に係る地代相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求することはできるものと解すべきである。