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共有物分割訴訟の特徴
形式的形成訴訟である
形式的形成訴訟とは、訴訟の形式はとっているものの、権利関係の確定を目的とするものではなく、その実質は非訟事件であり、ただ、対象となる法律関係の重要性などの政策的理由から訴訟手続とされているものです。
そのため、共有物分割訴訟では、次のような特徴があります。
- 当事者は、単に共有物の分割を求める旨の申し立てをすれば足り、分割の方法を具体的に指定することを要しない。
- 当事者が具体的な分割方法を希望しても、裁判所はこれに拘束されない。
したがって、請求の趣旨では、「別紙物件目録記載の土地を分割する。」などとすれば訴訟として成り立つことになります。
ただし、当事者は、裁判所により自分の希望する分割をしてもらうためには、①希望する分割方法を具体的に明らかにするとともに、②その分割方法が適切であることの主張・立証をすべきことは当然です。
最高裁昭和57年3月9日判決(集民135号313頁)
「共有物分割の訴えにおいては、当事者は、単に共有物の分割を求める旨を申し立てれば足り、分割の方法を具体的に指定することは必要でないとともに、共有物を現物で分割することが不可能であるか又は現物で分割することによつて著しく価格を損するおそれがあるときには、裁判所は、当事者が申し立てた分割の方法にかかわらず、共有物を競売に付しその売得金を共有者の持分の割合に応じて分割することを命ずることができるものと解するのが相当である。」
共有者の協議が整わないこと
民法258条1項では「共有物の分割について共有者間に協議が整わないときは、その分割を裁判所に請求することができる」と規定されており、共有物分割は、第一次的には協議により行われるべきものです。
訴訟において、被告から、上記条項を基に、協議が行われていないと主張される事案もありますが、具体的に協議が行われていなくても、共有者の一部に共有物分割の協議に応ずる意思がないため共有者全員において協議をなしえない場合も含まれます(最高裁昭和46年6月18日判決)。
既に分割の協議ができている場合、共有物分割請求訴訟は訴えの利益を欠き、却下されます(東京地裁平成16年11月19日判決)。この場合は、共有物分割請求ではなく、協議内容の実行を求めることになります。
最高裁昭和46年6月18日判決(民集25巻4号550頁)
「民法258条1項にいう「共有者ノ協議調ハサルトキ」とは、共有者の一部に共有物分割の協議に応ずる意思がないため共有者全員において協議をなしえない場合を含むものであつて、必ずしも所論のように現実に協議をした上で不調に終つた場合に限られるものではない(大審院昭和12年(オ)第1923号同13年4月30日判決法律新聞4276号8頁)。」
東京地裁平成19年7月19日判決(平成18年(ワ)24355号)
「『共有者間に協議が調わないとき』とは、共有者全員で協議したが不調に終わった場合に限られず、共有者の一部に協議に応ずる意思がないため共有者全員において協議をなしえない場合を含み、訴えの提起段階で協議不調の事実があり、被告が争っている以上、それで足りると解するのが相当であるところ、既に平成15年○月○日から、原告らと被告間で本件不動産の分割について協議がもたれていたにもかかわらず、原告らによって本訴が提起され、被告がそれを争っているのであるから、『共有者間に協議が調わないとき』の要件は十分に満たされるものである。」
東京地裁平成16年11月19日判決(平成15年(ワ)15476号)
「本件合意については、その内容から、既に本件土地についての分割方法については合意に達しているものであって、本件合意第2条に定める時期の点は、単に分筆登記を行うべき時期に関するものにすぎないというべきであるから、D及びその特定承継人である原告と、被告との間においては、本件合意により、分割の合意が整ったものというべきである。そして、共有物分割請求は、分割協議が成立したことにより、訴えの利益を欠くものと解すべきであるから、原告の共有物分割請求は、訴えの利益を欠くものとして却下するのが相当である」
東京地裁平成15年1月30日判決(平成14年(ワ)26094号)
「調停で本件不動産を売却することが合意されたにもかかわらず、3年近くもの間売却できていないことに照らすと、仮にその原因が原告らの側にあるとしても、共有者の協議により本件不動産の分割をすることができないと認めざるを得ない。」
東京高裁平成6年2月2日判決(平成5年(ネ)4088号)
「共有不動産を任意に売却して売却代金を持分割合に従って配分する旨の裁判上の和解が成立しても、右和解成立後3年近く経っても任意売却できる見込みがない状態にある場合には、特段の事情のない限り、共有者は裁判所に対し共有不動産の分割を請求することができると解するのが相当である。」