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相続と共有物分割

共有状態が生じる原因の多くは相続です。そこで、相続と共有物分割についての特有の問題点につき整理しました。

遺産共有を解消する手続は遺産分割である

相続が発生し、複数の相続人が遺産を共有している状態を遺産共有と言います。遺産共有を解消するためには、遺産分割協議、協議が調わない場合には家庭裁判所における遺産分割調停、審判手続により分割されることになります。遺産分割手続において、特別受益や寄与分の主張とあわせて処理されることになるのです(最高裁昭和62年9月4日判決)。
遺産共有の状態で共有物分割請求訴訟を提起しても、却下されますので注意してください(東京地裁平成19年7月19日判決(平成16年(ワ)1512号、東京地裁平成17年6月30日判決(平成17年(ワ)第1298号))。
ただし、共同相続人の一人から遺産を構成する特定不動産について同人の有する共有持分権を譲り受けた第三者が共同所有関係の解消を求める方法として裁判上とるべき手続は遺産分割ではなく民法258条に基づく共有物分割訴訟となります(最高裁昭和50年11月7日判決)。

最高裁昭和62年9月4日判決(集民151号645頁)

「遺産相続により相続人の共有となつた財産の分割について、共同相続人間に協議が調わないどき、又は協議をすることができないどきは、家事審判法の定めるところに従い、家庭裁判所が審判によつてこれを定めるべきものであり、通常裁判所が判決手続で判定すべきものではないと解するのが相当である。」

最高裁昭和50年11月7日判決(民集29巻10号1525頁)

「共同相続人が分割前の遺産を共同所有する法律関係は、基本的には民法249条以下に規定する共有としての性質を有すると解するのが相当であつて(最高裁昭和28年(オ)第163号同30年5月31日第三小法廷判決・民集9巻6号793頁参照)、共同相続人の一人から遺産を構成する特定不動産について同人の有する共有持分権を譲り受けた第三者は、適法にその権利を取得することができ(最高裁昭和35年(オ)第1197号同38年2月22日第二小法廷判決・民集17巻1号235頁参照)、他の共同相続人とともに右不動産を共同所有する関係にたつが、右共同所有関係が民法249条以下の共有としての性質を有するものであることはいうまでもない。そして、第三者が右共同所有関係の解消を求める方法として裁判上とるべき手続は、民法907条に基づく遺産分割審判ではなく、民法258条に基づく共有物分割訴訟であると解するのが相当である。けだし、共同相続人の一人が特定不動産について有する共有持分権を第三者に譲渡した場合、当該譲渡部分は遺産分割の対象から逸出するものと解すべきであるから、第三者がその譲り受けた持分権に基づいてする分割手続を遺産分割審判としなければならないものではない。のみならず、遺産分割審判は、遺産全体の価値を総合的に把握し、これを共同相続人の具体的相続分に応じ民法906条所定の基準に従つて分割することを目的とするものであるから、本来共同相続人という身分関係にある者または包括受遺者等相続人と同視しうる関係にある者の申立に基づき、これらの者を当事者とし、原則として遺産の全部について進められるべきものであるところ、第三者が共同所有関係の解消を求める手続を遺産分割審判とした場合には、第三者の権利保護のためには第三者にも遺産分割の申立権を与え、かつ、同人を当事者として手続に関与させることが必要となるが、共同相続人に対して全遺産を対象とし前叙の基準に従いつつこれを全体として合目的的に分割すべきであつて、その方法も多様であるのに対し、第三者に対しては当該不動産の物理的一部分を分与することを原則とすべきものである等、それぞれ分割の対象、基準及び方法を異にするから、これらはかならずしも同一手続によつて処理されることを必要とするものでも、またこれを適当とするものでもなく、さらに、第三者に対し右のような遺産分割審判手続上の地位を与えることは前叙遺産分割の本旨にそわず、同審判手続を複雑にし、共同相続人側に手続上の負担をかけることになるうえ、第三者に対しても、その取得した権利とはなんら関係のない他の遺産を含めた分割手続の全てに関与したうえでなければ分割を受けることができないという著しい負担をかけることがありうる。これに対して、共有物分割訴訟は対象物を当該不動産に限定するものであるから、第三者の分割目的を達成するために適切であるということができるうえ、当該不動産のうち共同相続人の一人が第三者に譲渡した持分部分を除いた残余持分部分は、なお遺産分割の対象とされるべきものであり、第三者が右持分権に基づいて当該不動産につき提起した共有物分割訴訟は、ひつきよう、当該不動産を第三者に対する分与部分と持分譲渡人を除いた他の共同相続人に対する分与部分とに分割することを目的とするものであつて、右分割判決によつて共同相続人に分与された部分は、なお共同相続人間の遺産分割の対象になるものと解すべきであるから、右分割判決が共同相続人の有する遺産分割上の権利を害することはないということができる。このような両手続の目的、性質等を対比し、かつ、第三者と共同相続人の利益の調和をはかるとの見地からすれば、本件分割手続としては共有物分割訴訟をもつて相当とすべきである。」

遺産共有持分と他の共有持分とが併存する場合

遺産共有持分と他の共有持分とが併存する共有物について、共有物分割訴訟が提起され、遺産共有持分を他の共有持分を有する者に取得させ、その者に遺産共有持分の価格を賠償させる方法による分割の判決がされた場合には、遺産共有持分権者に支払われる賠償金は、遺産分割によりその帰属が確定されるべきものであるから、賠償金の支払を受けた遺産共有持分権者は、これをその時点で確定的に取得するものではなく、遺産分割がされるまでの間これを保管する義務を負うとされています(最高裁平成25年11月29日判決、東京地裁平成28年1月15日判決(平成27年(ワ)14220号))。

最高裁平成25年11月29日判決(民集67巻8号1736頁)

「共有物について、遺産分割前の遺産共有の状態にある共有持分(以下「遺産共有持分」といい、これを有する者を「遺産共有持分権者」という。)と他の共有持分とが併存する場合、共有者(遺産共有持分権者を含む。)が遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係の解消を求める方法として裁判上採るべき手続は民法258条に基づく共有物分割訴訟であり、共有物分割の判決によって遺産共有持分権者に分与された財産は遺産分割の対象となり、この財産の共有関係の解消については同法907条に基づく遺産分割によるべきものと解するのが相当である(最高裁昭和47年(オ)第121号同50年11月7日第二小法廷判決・民集29巻10号1525頁参照)。
そうすると、遺産共有持分と他の共有持分とが併存する共有物について、遺産共有持分を他の共有持分を有する者に取得させ、その者に遺産共有持分の価格を賠償させる方法による分割の判決がされた場合には、遺産共有持分権者に支払われる賠償金は、遺産分割によりその帰属が確定されるべきものであるから、賠償金の支払を受けた遺産共有持分権者は、これをその時点で確定的に取得するものではなく、遺産分割がされるまでの間これを保管する義務を負うというべきである。
そして、民法258条に基づく共有物分割訴訟は、その本質において非訟事件であって、法は、裁判所の適切な裁量権の行使により、共有者間の公平を保ちつつ、当該共有物の性質や共有状態の実情に適合した妥当な分割が実現されることを期したものと考えられることに照らすと、裁判所は、遺産共有持分を他の共有持分を有する者に取得させ、その者に遺産共有持分の価格を賠償させてその賠償金を遺産分割の対象とする価格賠償の方法による分割の判決をする場合には、その判決において、各遺産共有持分権者において遺産分割がされるまで保管すべき賠償金の範囲を定めた上で、遺産共有持分を取得する者に対し、各遺産共有持分権者にその保管すべき範囲に応じた額の賠償金を支払うことを命ずることができるものと解するのが相当である。」

共有物分割には遺産共有が解消される必要がある

遺産共有の状態のままですと、上記のとおり遺産分割手続により分割されることになりますが、遺産分割により通常の共有になった後に分割するには共有物分割の手続によることになります。

東京地裁平成19年11月13日判決(平成18年(ワ)15768号)

「本件不動産は本件遺言の執行により、すでに原告ら及び被告の共有として相続登記されているのであるから、その共有関係の解消は共有物分割手続によるべきであり、これを遺産分割によるべきとする被告の主張は採用することができない。したがって、本件不動産の分割手続として共有物分割を求める本件訴えは適法である。」

東京高裁平成2年5月21日判決(平成元年(ネ)4404号)

「相続人の間で、法定相続分の割合で遺産を分割する趣旨の合意が黙示的に成立しており、遺産分割の協議が調っていたものと認めるのが相当である。」

東京地裁昭和45年2月16日判決(昭和43年(ワ)1613号)

「遺産の一部もしくは全部につき共同相続人の共有とする遺産分割の調停の適法であることは多言を要しないし、右による共有関係は民法249条ないし262条により律せられ、遺産分割に関する法令の適用を受けるべきものではないから、共有物分割の訴(民法第258条)を提起することも又適法であるところ、本件においても前記昭和38年における調停において遺産分割が完了し、本件物件につき原被告らの共有とされたこと前記認定のとおりであるから、本件物件につき分割を求める本件訴は適法である。」

遺留分減殺と共有物分割の併合請求

例えば、亡Aの子である相続人Xが、遺言により不動産を取得したもう一人の子である相続人Yに対し、遺留分減殺請求すると、Yが価額弁償(民法1041条)しない限り、当該不動産はXとYの共有状態になります。遺留分減殺請求訴訟により勝訴判決を受けた後、XはYに対し共有物分割請求訴訟を提起して共有物の分割を行うことができます。
上記のように、遺留分減殺請求で持分を取得した後に別途共有物分割請求を行うのではなく、遺留分減殺請求とともに、遺留分減殺によってXとYの共有となっている当該不動産の共有物分割を請求することもできるとする裁判例があります(東京地裁平成28年6月20日判決(平成26年(ワ)26618号)、東京地裁平成17年4月4日判決、東京地裁平成17年1月25日判決(平成14年(ワ)18893号)、東京地裁平成16年6月14日判決(平成13年(ワ)9510号))。
全面的価格賠償もしくは競売による分割が予想されるケースではともかく、現物分割が予想されるケースでは訴訟の内容が複雑になり過ぎる可能性がありますので、この点につき十分に検討する必要があると思われます。

東京地裁平成17年4月4日判決(平成14年(ワ)18996号)

「遺留分減殺請求訴訟の確定後に共有物分割訴訟を提起すべきと主張するが、共有物分割請求訴訟においても、受遺者は、共有関係の存否に関連して価格弁償の抗弁を提出することができること、共有物分割の方法は必ずしも競売によるものだけではないうえ、競売手続についても特段の不都合は見あたらないことなどに鑑みれば、遺留分減殺請求訴訟を経ることなく共有物分割訴訟を提起することが許されないとはいえない。」

この記事は弁護士が監修しています。

弁護士 井上元(いのうえもと) OSAKA ベーシック法律事務所

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