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農地賃貸借を解除・解約するには?
農地の賃貸借契約を解除、解約申入れ、合意解約、更新拒絶をするためには、原則として、知事の許可を受けなければならず(農地法18条1項)。これには例外が定められていますが、解除、解約等についても規制されているのが農地法の特徴の一つであり注意が必要です。地代不払いのような債務不履行による場合であっても許可が必要なのです。
知事の許可は、事前に得ることを要します(最高裁平成4年5月22日判決)。
また、最高裁昭和48年5月25日判決は、賃貸借の解約による終了を主張する者は、許可があつたことを主張立証すれば足り、そのほかに、さらに農地法所定の事由の存在を主張立証する必要はないとしています。解除等の事由については知事に判断の権限が存するということです。
18条2項の解除等の事由
1号
賃借人が信義に反した行為とした場合
2項
その農地または採草放牧地を農地または採草放牧地以外のものとすることを相当とする場合
3項
賃借人の生計、賃貸人の経営能力等を考慮し、賃貸人がその農地または採草放牧地を耕作又は養畜の事業に供することを相当とする場合
4項
その農地について賃借人が第三十六条第一項の規定による勧告を受けた場合
5項
賃借人である農地所有適格法人が農地所有適格法人でなくなつた場合並びに賃借人である農地所有適格法人の構成員となつている賃貸人がその法人の構成員でなくなり、その賃貸人又はその世帯員等がその許可を受けた後において耕作又は養畜の事業に供すべき農地及び採草放牧地の全てを効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行うことができると認められ、かつ、その事業に必要な農作業に常時従事すると認められる場合
6項
その他正当の事由がある場合
宅地並み課税による逆ざや現象を理由とする解除は可能か?
最高裁平成13年3月28日判決は、宅地並み課税により、固定資産税等が地代を上回る逆ざや現象が生じている場合における地代増額請求を否定しましたが、一方、逆ざや現象を理由に賃貸借契約を解消できる旨の判示をしています。尚、判決文中の農地法20条は現在(平成30年8月)の18条に該当します。
「農地所有者が宅地並み課税による税負担を小作料に転嫁することができないとすると、農地所有者は小作料を上回る税を負担しつつ当該農地を小作農に利用させなければならないという不利益を受けることになる。しかし、宅地並み課税の制度目的には宅地の供給を促進することが含まれているのであるから、農地所有者が宅地並み課税によって受ける上記の不利益は、当該農地の賃貸借契約を解約し、これを宅地に転用した上、宅地として利用して相応の収益を挙げることによって解消することが予定されているのである。また、賃貸借契約の解約後に当該農地を含む区域について生産緑地地区の指定があったときは、宅地並み課税を免れることができるから、農地所有者は、これによっても不利益を解消することができる。そして、当該農地の賃貸借契約について合意解約ができない場合には、農地所有者は、具体的な転用計画があるときには法20条2項2号に該当するものとして、あるいは当該農地が優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域である市街化区域内にあることや逆ざや現象が生じていることをもって同項5号に該当するものとして、解約について知事の許可(同条1項)を申請し、具体的事案に応じた適正な離作料の支払を条件とした知事の許可を得て(同条4項。平成12年農林水産省令第5号による改正前の農地法施行規則14条1項7号参照)、解約を申し入れることができるものと解される(民法617条)。」
尚、上記最高裁の事案では、貸主が借主に対して生産緑地指定に同意するよう求めたものの、借主がこれに同意しなかったという事情があります。
また、下級審においても逆ざや現象を理由として解約の不許可処分を違法として取り消した裁判例があります(宇都宮地裁平成24年9月13日判決、同控訴審・東京高裁平成25年3月7日判決)。