建売住宅基礎の重大な瑕疵につき売主会社及び仲介会社の代表者の責任を認めた大阪高判H25.3.27
建売住宅に重大な瑕疵があるとして売主会社、売主会社の代表者および仲介会社の代表者に対する損害賠償請求を認めた大阪高裁平成25年3月27日判決をご紹介します。
事案の概要
買主は、売主会社から建売住宅を購入する際、当該建物が公庫仕様でないにもかかわらず公庫仕様であると説明を受けた購入した後、公庫仕様に合致していないことが判明したため、売主会社、同社の代表者および仲介会社の代表者に対して損害賠償請求を行いました.
1審の大津地裁平成23年6月30日判決は、売主会社の責任は認め、各代表者の責任は認めなかったため、双方から控訴がありました。
控訴審判決
控訴審の大阪高裁平成25年3月27日判決は売主会社、同社の代表者及び仲介会社の代表者に対する損害賠償責任を認めました。
瑕疵の判断基準及び瑕疵について
買主及び売主会社は、本件売買契約において、売主会社が本件建物を当時の最新の公庫仕様を満たすように施工することを合意したと認められ、本件売買契約の当事者である売主会社との関係においては、公庫仕様に照らして本件建物の瑕疵の存否を判断するのが相当である。
本件建物の基礎の底盤のコンクリートの厚さの施工状況は、他の場所でも同様であると推認でき、底盤の厚さ及び鉄筋の太さが本件設計図書が予定している厚さ及び太さに満たないことは、いずれも瑕疵に該当する。
売主会社の責任について
本件建物建築の工事施工者及び工事監理者は、いずれも売主会社であったと認められる。本件建物のべた基礎の瑕疵は、建物の安全性の最低限を画している建築基準法及び施行令に反する基本的な安全性を損なう瑕疵であって、本件建物の建替えを要する程の重大な瑕疵であり、また、瑕疵の性質に鑑み、これを放置すればいずれは居住者等の生命、身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合に当たるものということができる(一審被告らは、本件建物の基礎について目立った不具合が確認されていないと主張するが、~によれば、平成二三年二月の段階で、原審における進行協議期日における現場見分の際には確認されなかった不具合として、本仕建物の換気口の修理後にひび割れが生じ、本件建物と裏の畑との境界のブロックにひび割れが生じ、本件建物の玄関の壁紙にL字型に裂けた破断線が生じ、本件建物基礎の一箇所にひび割れが生じていることが認められ、これらの不具合は、本件基礎の瑕疵との具体的な直接的因果関係まで明らかになっているとはいえないものの、少なくとも、本件建物の基礎の瑕疵との関係の相当高い可能性を有する不具合というべきであって、そのような不具合が近時においても増加しているというべきであるから、本件建物の基礎の瑕疵に起因する不具合が存在しないと認めることができないことは明らかである。)。したがって、売主会社には、本件建物の工事施工者及び監理者として、公庫仕様を前提とした本件売買契約を締結した上で、公庫仕様ではない施工図面を下請業者に交付して施工させながら、実効性のある監理監督を行っていないという重大な過失があり、不法行為責任を負うというべきである。
売主会社代表者の責任について
売主会社代表者は、売主会社が下請業者に対して本件設計図書とは異なる図面を交付してそれによる施工をさせることについて認識していたばかりでなく、売主会社の代表取締役という地位からいっても、これを指示していたものと推認される。また、売主会社代表者は、本件設計図書、特にそのうち建物の安全性確保に重要性を持つ事項を指定していた矩計図を下請業者に示さない以上は、仮に公庫仕様に従わないとしても少なくとも建築基準法の安全性に係わる規定を遵守する施工となるように、下請業者の施工を厳重に監理監督する必要があることが容易に認識できるにもかかわらず、売主会社をしてそのような実効性のある監理監督を行わせなかったものである(本件建物の瑕疵の多さ及びその重大さに照らすと、売主会社は全く実質的な監理を行っていなかったのではないかと推認される。)。したがって、売主会社代表者には、売主会社の代表取締役として、その業務執行について少なくとも重大な過失があったということができるし、上記事実によれば、売主会社代表者の行為は、買主との関係で民法709条の一般不法行為にも当たるものと判断される。
仲介会社代表者の責任について
仲介会社代表者には、売主会社を中心とした企業グループのオーナーとして又同社の代表取締役として、その業務執行について少なくとも重大な過失があったということができるし、また、公庫融資対象物件でない建物について、下請業者に対して公庫仕様の設計図書とは異なる図面を交付してそれによる施工をさせていたことや、それにもかかわらず下請業者に対する実効性ある監理監督が行われない業務体制をしていたことについても、買主との関係で民法709条の一般不法行為責任を負う(売主会社代表者と共同不法行為の関係になる。)ものと判断される。
そして、大阪高裁判決は、売主会社、売主会社代表者および仲介会社代表者に対して立替費用などの損害賠償を命じました。
(弁護士 井上元)