不動産(土地・建物)明渡しと執行官

 裁判で、金銭給付を命じる判決(例えば、「被告は、原告に対し、金○○万円を支払え。」)や建物の明渡しを命じる判決(例えば、「被告は、原告に対し、○○の建物を明け渡せ。」)を取得した場合、相手方が任意に金銭を支払ってくれたり、建物を明け渡してくれれば問題ありませんが、任意に履行してくれないこともあります。

 このような場合、自力救済は禁止されており、国家はその権力作用によって履行を強制してくれます。これが強制執行であり、民事上の執行については民事執行法などの法律で執行方法が定められています。

 この民事執行は、債権者の立場で見ると執行方法について大きく2通りがあります。

 一つは、預金や売掛金などの債権執行、不動産競売などのように執行裁判所が執行手続を行うものです。債権執行の場合、申立により執行裁判所が債権の差押命令を発して債権者に取立権限を与えてくれます。不動産競売では、申立により、執行裁判所が当該不動産を差し押さえて現況調査、鑑定評価のうえ入札に付し、配当手続まで行ってくれます。

 もう一つは、執行官が、現場で執行手続を行ってくれるものです。動産(家財道具、商品など)の差押えでは、申立により、執行官が現場で動産を差押え、換価、配当をしてくれます。不動産(土地、建物)の建物明け渡しでは、執行官が、現場に赴き、占有者を排除して債権者に土地や建物を渡してくれます。

 執行官は、各地方裁判所に裁判所職員であり、特別職の国家公務員です(裁判所法621項、国家公務員法2313号)。ただし、国から俸給を支給されず、職務の執行につき手数料を受けるというように特殊な面があります。

 大阪地方裁判所の場合、本庁のほか、執行センター(新大阪)、堺支部、岸和田支部にも執行官室が置かれ、執行官が在籍しています。ただし、執行センター(新大阪)の執行官は不動産競売のみを担当しており、動産執行、不動産引渡執行、保全処分の執行については本庁、堺支部および岸和田支部の執行官の担当となります。

 このように不動産(土地、建物)の建物明け渡しにおいては執行官が重要な役割を果たしますので十分な理解が必要です。

(弁護士 井上元)

この記事は弁護士が監修しています。

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